
武道や武術を学ぶ上で、礼儀作法は非常に重要です。特に、子供に空手を習わせる保護者の方々にとって、礼儀作法の身に付けは大きな関心事でしょう。本記事では、座礼・立礼の基本と武士の思想に触れながら、空手における礼儀作法について詳しく解説します。
礼儀作法は流派や道場、また国や文化によって異なることがありますので、ここで紹介する方法は一例としてお読みください。
Contents
座礼と立礼
座礼や立礼は、空手の稽古や試合の始まりと終わりに欠かせない礼儀作法です。これらの礼は、相手への敬意と自身の心を整えるために行われます。
座礼の方法
座礼は、正座の姿勢から行います。背筋を伸ばし、両手を腿の上に軽く置きます。その後、右手、左手の順に床に置き、三角形を作ります。この時、両手は自然に開き、頭をゆっくりと下げます。再び、右手、左手の順に腿の上に戻し、正座の姿勢に戻ります。
立礼の方法
立礼は、立った状態から行います。足を揃え、背筋を伸ばし、両手を体の横に自然に下ろします。ゆっくりと腰を曲げ、30度程度のお辞儀をします。顔は前を向いたまま、目線は下に落とさず、丁寧に行います。
誠空会のYouTubeの動画を参考にどうぞ。
武士の考え方「左座右起」
「左座右起」とは、武士の考え方で、左腰に差した刀を素早く抜けるための座る姿勢を指します。これは、相手に礼を尽くしつつも、気を緩めず隙を見せないための姿勢です。
武士の時代には、負けは即死を意味し、不意打ちで斬られることが命取りでした。現代では刀で斬られることはないかもしれませんが、人間関係において隙を作ることはトラブルのもとです。常に礼儀正しくし、相手を敬うと同時に隙を見せないことが大切です。
座礼のやり方|手順と、よくある間違い
座礼(ざれい)は、正座の姿勢から行う礼です。道場では稽古の始まりと終わりに行います。
手順
- 正座する。背筋を伸ばし、手は太ももの上に軽く置く
- 両手を、同時ではなく順に畳へ置く。左手を先に、次に右手。手のひらで三角形を作るように、指先を内側へ向ける
- 上体をゆっくり倒す。背中を丸めず、腰から折る
- 一呼吸置く。頭を下げたまま、ひと呼吸ぶん止まる
- 上体を起こす。右手を先に、次に左手の順で戻す
左手から置いて、右手から戻す——これが基本です。理由は後述する左座右起の考え方につながります。
よくある間違い
| 間違い | なぜ良くないか |
|---|---|
| 背中が丸まっている | 頭だけを下げる形になり、礼になっていない |
| 両手を同時に置く | 作法としての順序が消える |
| おしりが浮く | 前のめりになり、姿勢が崩れる |
| 顔を上げたまま下げる | 相手を見上げる形になり、失礼にあたる |
| すぐ起き上がる | ひと呼吸置かないと、形だけの礼になる |
⚠ 細かい作法は流派・道場によって異なります。ここに書いたのは一般的な形で、通っている道場の指導が優先です。
立礼のやり方|角度と、視線の置き方
立礼(りつれい)は、立った姿勢から行う礼です。
手順
- かかとをつけ、つま先を軽く開いて立つ
- 手は体の横、または太ももの前で軽く揃える
- 腰から上体を折る。首だけを曲げない
- ひと呼吸置いてから、ゆっくり起こす
角度の目安
| 場面 | 角度の目安 |
|---|---|
| すれ違い・軽い挨拶 | 15度ほど(会釈) |
| 道場への礼・相手への礼 | 30度ほど |
| 神前・正面への礼 | 45度ほど(深い礼) |
視線は、下げた先の畳や床に置きます。相手を見つめたまま礼をするのは、武道では「隙を見せない」ではなく「無礼」と受け取られます。
道場で行う礼の種類
道場では、場面ごとに礼の相手が変わります。
| 礼の名前 | 相手 | いつ |
|---|---|---|
| 正面への礼(神前への礼) | 道場の正面 | 稽古の始めと終わり |
| 師範・先生への礼 | 指導者 | 稽古の始めと終わり |
| 相互の礼 | 稽古仲間 | 組んで練習する前後 |
| 入退場の礼 | 道場そのもの | 出入りのとき |
道場に入るとき・出るときに、一度立ち止まって礼をする——これが習慣になっている人は、稽古中の所作も自然と整います。
道場に通えない方へ
礼の形を覚えたあと、道場で実際に見られているのは別のところです。入門者に先に言っておきたい5つを、noteにまとめました。
空手を始めた最初の3ヶ月で、ほとんどの人がつまずく5つのこと誠空会 代表・田中幸尚が note に書いています
「左座右起」とは|言葉の意味と、実際の動作
左座右起(さざうき)とは、座るときは左足から、立つときは右足からという作法です。
なぜこの順番なのか
武士は刀を左の腰に差していました。左足から座れば刀が体の内側に収まり、右足から立てば、すぐに刀を抜ける姿勢になります。
つまり左座右起は、相手に礼を尽くしながら、同時に無防備にならないための順番です。礼と警戒が同居しているところに、武道の作法の性格がよく表れています。
実際の動作
座るとき(左座)
- 左足を半歩引く
- 左膝を床につける
- 右膝をつける
- 両足のつま先を伸ばし、正座の形にする
立つとき(右起)
- つま先を立てる
- 右膝を立てる
- 右足に体重を乗せて立ち上がる
- 左足を揃える
⚠ 座礼で手を置く順(左手から)と、足の順(左足から)は同じ考え方です。「左から入り、右から出る」と覚えると、動作がつながります。
子どもに礼を教えるときのコツ
- 順番は1つずつ。「今日は左足から座る」だけを1週間
- 形より、止まることを教える。ひと呼吸置けているかどうかが、礼に見えるかの分かれ目です
- 「なぜ」を一度だけ話す。刀の話は、子どもがいちばん覚えます
- できていないときに指摘しすぎない。礼は毎回やるので、直す機会は何度でもあります
よくある質問
Q. 座礼のとき、手はどう置くのが正しいですか。
A. 左手を先に、次に右手を畳に置き、両手で三角形を作るように指先を内側へ向けるのが一般的です。ただし流派によって異なります。
Q. 立礼の角度に決まりはありますか。
A. 厳密な決まりはありませんが、道場や相手への礼は30度ほどが目安です。角度より、腰から折れているか・ひと呼吸置いているかのほうが見られます。
Q. 左座右起は、現代でも守る意味がありますか。
A. 刀を差す場面はありませんが、「決まった順番を、毎回同じように行う」こと自体が稽古です。所作が安定すると、動きも安定します。
Q. 正座が苦手(しびれる・痛い)です。
A. 無理をしないでください。膝や足首に痛みがある場合は、道場に伝えれば別の形(片膝立てなど)を認めてもらえることがほとんどです。
残心の考え方
武士道には「残心」の考え方があります。これは、戦闘が終わった後にも心を残し、隙を見せず精神を統一することを意味します。この考え方は空手や武道でも重要です。礼儀作法を通じて、心を整え、常に油断せずにいることが求められます。
私が初めて空手を習いに行った日、先生に挨拶をする際に頭を下げたら軽く叩かれました。先生は笑顔で「今のが刀だったら死んでたね」と言いました。私は小学生でしたが、「なんかカッコイイな」と思ったことを今でも覚えています。
礼儀作法と体幹トレーニングの結びつき
日本の礼儀作法は単なる形式ではなく、身体と精神のトレーニングとしても非常に有効です。特に正座は、体幹トレーニングの一環として非常に有用です。正座を正しく行うことで、体の中心を意識し、バランス感覚を鍛えることができます。これにより、姿勢の改善が期待できるだけでなく、発達障害の子供のトレーニングにも効果的です。正座を習慣化することで、心身の健康を維持し、礼儀を通じた精神の成長も図れます。
正座の姿勢を保つためには、腹筋や背筋を自然と使うため、体幹が強化されます。これにより、日常生活でも姿勢が良くなり、長時間座っても疲れにくい体を作ることができます。また、正座を通じて心を落ち着ける時間を持つことができ、精神の安定にも寄与します。
このように、日本の伝統的な礼儀作法は、身体と精神の両面での成長を促す大切な要素となっています。日々の生活に取り入れることで、より豊かな心身のバランスを保ちましょう。
コチラの記事も参考にしてください。
1977年から続く伝統と、現代格闘技として磨かれた実戦性を両立する道場。スポーツではなく「武道」として空手を学びたい方へ。
まとめ
礼儀とは、相手を敬うと同時に、隙を見せず、付け入られないように間合いを取ることです。組手でも同じですが、この間合いを取るのが難しいと感じるかもしれません。まずは形から礼儀作法を覚えましょう。
白帯さんは、以前に書いた「帯の結び方」や「道着の畳み方」もチェックして覚えて下さいね。
空手初心者の方はコチラのまとめ記事も参考にしてみてください。
礼儀作法を通じて、空手の精神を深く理解し、より良い人間関係を築いていきましょう。
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📖 「礼」の思想の原典(あわせて読みたい)
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